back

我が人生において最大の天敵との戦いについての記録 (あるいは、寝坊について)

前書き

Early to bed and early to rise, makes a man healthy, wealthy and wise. (Benjamin Franklin)

早寝早起きは人を健康に、裕福に、賢明にする (ベンジャミン・フランクリン)

世の中には2種類の人間がいる。寝坊をする人と、しない人だ。そして残念ながら、私は前者に属している。元々、私は寝坊をする人間ではなかった。父は寝坊をしない。母も寝坊をしない。姉も寝坊をしない。家族の中で朝が弱いのは、私と兄だけだ。そしてこの2人には共通点がある。2人とも、夜更かしをする。他の家族はしない。

兄がなぜ夜更かしをするようになったかは知らない。しかし、私が夜更かしをするようになった原因ははっきりしている。私が夜更かしをするようになったのは、パーソナルコンピュータというこのロクでもないオモチャを手に入れてからだ。パーソナルコンピュータはネットワークに繋がり、そしてそこにはここではないどこかにいる人達がいた。私が彼らや彼女らとコンタクトを取り、そしてそれが尽き果てることのないお喋りのはじまりだった。私はその時学生だったが、彼らや彼女らには仕事を持っていた人達もいた。普通の社会人が仕事を終え、家に帰り、食事を終え、(あるいは風呂がここに入るかもしれない)井戸端の定位置につくまでどれくらいの時間がかかるだろう? 大抵、その答えは深夜だった。私達の井戸端(人によってはこれをコミュニティと呼ぶかもしれない)はどちらかと言えば社会人が多く、当然、一番人が集まるのは深夜以降になった。

私は夜更かしをするようになった。一人暮らしになるとその傾向は加速し、時には徹夜をすることもあった。その価値はあったのだろうか? 関係ないのでここでは詳細は省こう(一言で言えば、あった)。いずれにしろ、人は夜更かしをしなければならないことがあることがわかってもらえればいい。あなたは夜更かしをする人間だろうか? しないならば何も問題はない。この文章を読んでいるより、他のもっと有意義なことに時間を使うことを薦める。

もう一度書こう。あなたは夜更かしをするだろうか? そして寝坊をしたことがあるだろうか? この2つの質問にイエスと答えた人達(私も含まれる)に寝坊をしないためのたったひとつの、そして一番重要なアドバイス。夜更かしはするな。経験上、夜更かしをしなければまず寝坊はしない。寝坊をするのは夜更かしをする時だけだ。

それでも夜更かしをする? オーケイ、じゃぁ次に行こう。

敵を知る

寝坊するのは自分自身だ。敵は、私たち自身だ。夜更かしをし、そして寝坊をしたことがある愛すべきあなた方はこういう経験があるだろう。

そして私達は朝、起きて時計の針を見て愕然とする。なんだってこんなことに

敵が手強いことを知らなければならない。敵は前夜私達が入念にセットしたトラップを全て解除し、その痕跡すら残さない。十重二十重に重ねても同じこと。彼らや彼女らにとって、数は問題ではない。私達はその惨状を前に何をしても同じだとつい絶望したくなる。しかし、同時にこんな経験もないだろうか?

あくまでこれは私の経験からの抜粋だ。もしかしたら、あなたの場合は違うのかもしれない。しかし、似たようなことが思い当たるのなら、そこに付け入る隙はある。そこにはヒントが隠されている。そのヒントとは何か? 全てに当てはまるのは、緊張している状況下ということだ。「ちょっと待った。目覚ましを変えたら緊張するだって?」そうだ。少なくとも私は緊張する。うまく動くだろうか? そしてうまく起きられるだろうか? そしてそう心配した結果、身体が朝にこう信号を出す。「おい、今日はいつもと違うんだ。目覚ましがちゃんと起こしてくれるなんて思うなよ」心配性の私はなぜかその新しい目覚ましが効力を発揮する前に起きている。そしてそれがしばらくの間続く。

緊張している朝は寝坊をしない。だからそんな状況下に自分を置けと言いたいわけではない。誰もそんな睡眠など欲していない。ここで言いたいのは、敵はそんな状況下では動こうとしない、ということだ。敵は私達のことをよく知っている。ジャングルの中で獲物を捜し求める蛇と同じように、強い獲物には見向きもしない。じっと状況を待つ。弱い獲物が来たときでも無茶はしない。身を潜め、獲物の様子を伺う。そして私達がもう十分だ。もう大丈夫だと判断し、油断したその時、鋭く牙をむき、私達の朝が絶望に染まる。

油断は私達の敵の大好物だ。1週間、1ヶ月、1年、続けてきた期間は関係ない。私達の敵はいつでもその時を待っている。

対策

ここでは私が敵を迎撃するために愛用している機材を紹介する。もし「対寝坊業界」というものがあるのならば、その中でも話題となっているだろう一品ばかりだ。

セイコークロック株式会社 PIXIS Super RAIDEN

その筋の人には有名な破壊的大音量を鳴らす史上最強の目覚まし時計。あまりにもうるさくて私はこれを「音量最高」でセットしたことがない。アパートやマンションなら必ず近所から苦情が出、鳴らしたまま放置して外出しようものなら隣家が警察を呼ぶことは間違いない。

National 生体リズム 光・めざましスタンド ASSA

設定した時間の30分前から陽光をエミュレーションしながら徐々にライトを点灯させ、セットした時間にはライト光量100%+アラームが鳴る、まさに技術の粋をつくした対寝坊目覚まし。その独特の方式により起床時は不快感が少なく、自然と目が開き覚醒状態になる。

実際

そんな機材を使っているなら、今はもう寝坊なんてないですよね?

確かに寝坊をすることはまずなくなったが、機材がいいからという理由ではない。現在私が使っているのは上の2点と「mp3の大音量自動再生」「普通の目覚まし」だ。そしてこの4種類を3種類ごとにローテーションさせて使用している。

私の経験上の話になるが、対策に絶対はない。人間はどんな状況にも慣れる生き物だ。ある意味でいえば、これは私達の敵が私達を油断させよう、油断させようとしている、とも言えるだろう。Super RAIDENが来た時、私はこれで天敵との戦いに終止符が打たれたと思っていた。3ヵ月後、見事にその希望は打ち砕かれた。ASSAが来た翌日の朝、快適な目覚めの中で今度こそはと確信を持った。4ヵ月後の結果についてはここに書くまでもないだろう。あなた方の想像の通りだ。

その次の「大音量のmp3」を導入する時に、今の私の対策の原型ができた。丁度導入した時にSuper RAIDENの電池が切れていて、動作しない状態になっていた。しばらくSuper RAIDENがない状態で過ごした後、電池を買ってきてSuper RAIDENに入れた翌朝……久しぶりに聞くであろうSuper RAIDENの音に(内心で)恐怖した私は、いつの間にか覚醒していた。そうして私は悟ったのである。私の敵をトラップに慣れさせない方法を。

オーケー、わかってる。これは単に私のケースだ。あなたのケースではない。あなたが同じことをやって、うまくいくとは限らない。あるいは、一度うまくいったように見えても、ある時の朝が絶望に染まるかもしれない(そもそも、寝坊というのはそういうものだ)。結局のところ、私も、私の敵も、あなたも、あなたの敵も、人間であるから全く同じということはありえない。あなたにはあなたの解決方法がどこかにあるのだろう。そしてそれは、私の方法ではないのかもしれない。

しかしもしかしたら、あなたが探している解決方法は、私と同じものなのかもしれない。もしあなたが私の方法でうまくいったならば、それは私にとって望外の喜びである。ぜひ試してみて欲しい。

私達の戦いに終わりはない。健闘を祈る。

あとがき

私が寝坊をしなくなったのは確かにローテーションのせいもありますが、本当の話を書くと睡眠時間を確保するようになったからです。寝坊をしていた朝を思い出すと、私の場合睡眠時間が4時間を切るとほぼ必ずと言っていいほど朝起きることができません。ですから、今は必ず(何があっても。それこそ地球が明日終わろうとも)4時間半以上睡眠時間が取れる状態で就寝するように心がけています。

でも、実はちょっと「おこし太郎」とか試してみたいなあ……なんて。そんなことを考えてるから寝坊するんでしょうけど。

更新履歴